2年目を迎えた取り組み。
私が週に一回専門学校に通ううようになって、早くも2年目の前期が終了しました。なかなか、思うようには授業は進まないし、うまく説明できなかった事も多く講師業はまだまだ試行錯誤の最中です。そもそも、服飾専門学校に来る学生さんたちの目は「洋服を作る事」だったり、年に2回行われるイベント、特に卒業展のファッションショーに行っている中で、EC、WEBの活用というアプローチはあまり想定にない事のようです。ですので、私の授業はまず興味をもってもらうところからのスタート。
意外だと思われるかもしれませんが、もはやWEBに物心つく頃から触れている彼らにとっては、常にあるモノであって深く考える必要のないモノであるを痛感します。私たちが「水道って、どんな仕組みで通ってる」を考える事がないのと同じです。水が出て当たり前のように、情報が流れてきて当たり前。身近だからこそ、深く考察することにハードルがあるようです。デジタルネイティブな世代=WEB活用が身についている?ではないという事です。
私が前提を間違えていたことに気づくのには、そんなに時間は掛からなかった。そこが、試行錯誤の始まりでした。
店舗の販売員にもWEBの知識が必要な訳。
アパレル企業が求めている人材像が変わりつつある。まぎれもない事実です。
まずは販売員。小売り部門を持つ企業においては、新卒採用は販売職からのスタートが一般的です。かくいう私も20年店頭に立っていた販売員でした。過去と現在で大きく違っているのが、お客様の情報量です。私たちの時代では、店頭に来ないと得られない情報も多かったので、足を運んでもらいやすかったですが。今はというと、事前に情報を吟味してある程度の目星がつかないとご来店さえされない状況です。ここ数年のコロナ禍でさらに加速したところもありますが。
つまり、前時代的な待ちの販売員、店舗内でのパフォーマンスだけでは実際売上に繋がらないのです。
来店前の事前情報の提供こそが、来店要因であり、それを担うのはECとSNS。
店舗スタッフの役割の中に、お店の外に向けた情報発信の比重が高くなっているということです。
もちろん、今まで通りのサービスや接客技術も大事ではありますが、お客様の判断基準が事前情報によって行っている以上。うまく情報発信ができない事はお店の存在感を薄めてしまう結果に繋がります。
スタッフスナップだけではない!
そういった背景を色濃く反映しているのが、スタッフスナップのコンテンツ。多数の企業で採用され、スタッフの評価基準のひとつとされている場合も多いですよね。コーディネイトで着用したアイテムがECで売れれば、個人の成績になるシステムです。店頭スタッフが情報発信を行うツールとしては有効な仕組みだと思います。ただ、これだけでは不十分。なぜなら、パーソナリティが見えないからです。商品自体での差別化はもはや不可能な時代ですよね。ブランドなりお店のストーリーが無ければ、どこで買っても一緒、となると待っているのは価格競争。それも国内ではGUに、グローバルではSHEINにかなうブランドはあり得ない。商品以外の厚いサイドストーリーが不可欠です。店舗のスタッフがECのコンテンツに積極的に出演する。SNSの演者として前面に出る事がスタッフ、ひいては所属するブランドのブランディングに繋がるのです。
誰にどんな情報をどのメディアを使って届けるか?
さらに深堀していくと、ただやみくもに情報を発信する事がどれだけ無駄の多い世界線なのか?を知ることになります。WEBの世界をよく理解をすれば、必要なのはマーケティングスキルであることにぶち当たります。「誰にどんな情報をどのメディアを使って届けるか?」をデザインしなければ、無数にある情報に波に飲み込まれ、誰にも見つからない深海に沈む。これを理解してないとせっかく頑張っている事も、無駄に思えてくる。そして継続ができない。結果誰にも届かない。WEBの世界での「あるある」なんです。
情報をデザインして発信すると同時に、届いているかどうか?をデータで検証する。そう言ったチューニング能力がWEB活用にとって重要な要因なのです。店頭の販売員にも情報のデザイン能力と検証するポイント。そして次に向けての仮説建て。学んでおいて、損はないはずではないでしょうか?
セカンドキャリアにも?
私は20年販売員をしていましたが、たぶんすでに限界でした。運よくEC部門へ異動がかなったことで次への道が開けましたが。販売員一本では体力的にも、ニーズとしても厳しかったと思います。販売員のセカンドキャリア。たくさんの同僚を見送ってきましたし、いわゆる本部職として上がれる人はごくわずか。WEB活用を身に着けることで、現場を離れざるを得ないときに身を助ける事につながるのでは?とも考えています。学生さんたちが考えているほど甘い世界ではありません。いつか必ずぶつかる壁に向かう時、自分を助けるのは勉強量だったりするのでは?
モノづくりやMDにも、必要な目線。
現在アパレル業界の平均的なEC化率は2割~3割の間くらいだと言われています。EC先進国のアメリカや中国の状況を鑑みると、少なくても4割程度に届くのでは?と考えています。(ちなみに中国は半数以上、日本に地理的要因と商習慣的ではそこまでは行かないはず)であれば、モノ作りも4割をECで売るつもりで作る目線が必要です。サステナビリティが必須になる時代背景を考えると「売れないモノを作ることはゴミを作ること」だと学生さんたちには、口癖のように伝えています。
モノづくりに携わる人、デザイナーや商品企画はもちろん、MDや係数管理をする人達にも、メーカーの営業に至るまで、ECでの売れ筋の傾向や販促の仕方、出てくるデータを検証してモノづくりに反映させる能力が不可欠なはずですよね。
専門学校での取り組み
アパレルで働く以上はECやWEB活用は必要不可欠なスキルです。また、下支えするマーケティング的な思考も同様に。すこしでもその経験値を付けておきたいと考えているのが、現在の専門学校での取り組みです。前職を退職し、真っ先にやってみたかった事が教育。その機会を与えてくれた岡山ビジネスカレッジには感謝してもしきれないのですが、私自身が、EC部門への異動で苦労した経験を出来るだけ伝えておきたいと考えています。これから少子高齢化が進めば、アパレル特にカジュアル業態は生き残りへの戦いになります。これは必然です。それを承知しておきながら、学生さんたちを業界へ送り込まなければいけない。それであればたくさん武器を携えて送り出したい。これが私の専門学校での取り組みを行う理由です。出来れば、今すでに業界で活躍してる販売員さんへのリスキリングへも取組を拡げていきたいです。業界の更なる発展とそこで働く人たちの笑顔の為にも。
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