先日公開した記事、
「アパレル販売員って底辺職ですよね?」と言われて考えたこと
では、授業中に学生から投げかけられた一言にショックを受けた話を書いた。
私は販売員として、本気で仕事と向き合ってきた時代があり、そんな良くないイメージで販売員が語られることが看過できなかった。
かなりモヤモヤした一週間を過ごし、いっそ想いをぶちまける授業を用意した。
45分×2コマ。まさしく90分一本勝負!
暑苦しいかもしれないが、彼ら、彼女らの職業観をぶっ壊したい!
そもそもの発端
授業では、カリキュラムとしてファッション販売技術という項目を用意していました。一応の基礎としては学んでおいて欲しいと思ったし、現場でも本当に必要な事なので。
ただ、なんだろう?反応が鈍い。
そもそも、販売にフォーカスしていない子たちにとっては?
「関係ないし、めんどくさい」
ってかんじなのかな?と思えてきた。
そこで
「将来、アパレル販売員になりたい人?」
って聞いたところ。
まさかの結果はゼロ。誰も手が上がらなかった。
そこから出てきたのが、「アパレル販売員って底辺職ですよね?」
分からんでもない。でも完全にイメージ先行だ!
分からんでもない。
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給料が安い。
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休みが少ない。
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土日に友達と遊べない。
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将来が不安。
そう思う気持ちも分かる。
でも、それはあまりにもイメージ先行だ。
これで、この気持ちを私が飲み込んでしまうと、
今後、彼らに教える事はほぼなくなる。
だって、今の授業内容は私が歩んできた販売員からの経験値以外の何もモノでもないからだ。
私の存在を掛けた90分一本勝負のはじまりだ。

販売員 → 店長 → EC事業マネージャー → 講師(ECコンサル業)
これが私のキャリアのすべて、今でこそマーケティングがなんて言っていますが、
私の土台は販売員時代に身に着けてスキルが土台になっているってことです。
だからこそ、販売員を軽んじる事は自分自身を否定することになるのです。
服を売るために必要なスキルとは何か
「服を売るために必要なスキルって何だと思う?」
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接客力。
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コミュニケーション力。
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商品知識。
概ね返ってくる答えはこんなところだ。
もちろん正解ではあるが、圧倒的に足りていない。
「ヒトはなぜ服を買うか?」
を徹底的に深堀していく視点だと思っている。
「いいモノだったら売れる」
「品質が良ければ売れる」
「トレンドに乗っかれば売れる」
ほんと?なんだろうか?
私が学んだマーケティング論では
答えは
「良さそうに見えるから売れる」
が大きな答えです。
商品知識も、接客力も、販売員の出で立ちも、「良さそうに見える」パーツでしかない。もちろんVMDも同じ。
そしてコミュニケーション力も、「良さそうに見える」を伝えるデバイスでしかない。

そして、比較的自由度のある店頭で重要なのは、タスクの管理力や、効率の動きかた。「良さそうに見える」仕事と、それを支えるための作業面。
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商品整理
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在庫管理
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清掃
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レジ業務
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入荷対応
販売員の仕事は意外なほど作業も多い。
だからこそ、
「良さそうに見える」を作る仕事と、
それを支える作業を両立できる人が強い。
私は、それが良い販売員だと思っている。
どのターゲットに対して「良さそうに見える」を作って伝えて理解してもらうまで。これってマーケティングそのものだったりしませんか?
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ターゲットを考える
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価値を考える
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伝え方を考える
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反応を見る
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改善する
販売員は毎日それを店頭で実践している。
言い換えれば、
店頭は生のマーケティングを学べる場所なのだ。
ただし、同じ店頭に立っているだけでは、結果は大きく変わる。
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お客様を観察する人
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売場を観察する人。
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なぜ売れたのかを考える人
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なぜ売れなかったのかを考える人
そういう人は成長する。
一方で、
ただ時間が過ぎるのを待つだけなら、
何年店頭に立っても得られるものは少ない。
後者の販売員が販売員の存在価値を下げているに過ぎない。
それなら、やめておいたほうがいい。
アルバイトで事足りるので。
そして私は学生たちに、もう一つこんな話をした。
どれだけ素晴らしい商品でも、お客様がレジでお金を払ってくださらなければ売上にはならない。
極端な話、2万円のTシャツがあったとしても、お客様に価値が伝わらず売れ残ってしまえば、その商品は在庫として眠り続けるだけだ。
価値はその時点ではまだゼロ。
もしくは、究極売れ残ればごみとなり、価値はマイナスになる。
デザイナーが考えた。
パタンナーが形にした。
生産担当が作った。
バイヤーが仕入れた。
多くの人の努力が詰まった商品でも、お客様に選ばれなければ価値は完成しない。
商品の価値は作るだけでは完成しない。
お客様に価値を伝え、選んでいただいて初めて価値になる。
だから私は販売員を、
「最後の価値創造者」
だと思っている。
販売員はただ服を売る人ではない。
商品とお客様をつなぐ人だ。
ブランドが届けたい価値を、お客様へ届ける最後のランナーだ。
だから私は、販売員という仕事に誇りを持っている。
店長は小さな会社の社長
販売員の傍ら、次に経験したのが店長だった。
ここで学んだことはさらに大きい。
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売上管理
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人材育成
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シフト作成
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在庫管理
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目標管理
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チームづくり
店長という仕事は、言ってしまえば小さな会社の社長のようなものだ。
売上という責任を持ち、
人を育て、
チームをまとめ、
結果を出す。
そのすべてを経験することになる。
私は20代後半で店長になったが、多い時は30人近くのスタッフを抱え正直、とても苦労した。
自分一人が頑張ればいい販売員時代とは違い、人を通じて成果を出さなければならない。
思うように伝わらないこともあった。
数字に追われることもあった。
チームがまとまらず悩んだこともあった。
でも今振り返ると、その経験があったからこそ今の自分がある。
そしてこれは、販売職の大きな魅力の一つだと思う。

そして、難しかったからこそ辞めなかった。
「やりがい」という言葉では片付かない。「執着」に近い
企業にもよるが、アパレル業界では比較的若いうちからマネジメントを任されることが少なくない。
つまり、若いうちから経営に近い経験ができるということだ。
経営者になりたい。
ブランドを立ち上げたい。
将来独立したい。
そんな夢を持つ人ほど、一度店長という仕事を経験してみる価値はあると思う。
後になって気づいた。
経営を学びたければ、店長を経験するのも立派な方法なのだと。
EC担当になって気づいたこと
その後、私はEC事業部へ異動した。
当時は正直、不安もあった。
店頭しか知らない自分に、WEBの世界で何ができるのだろう。
そんなことを考えていた。
ところが実際にやってみると驚いた。
販売員時代に身につけたことが、そのまま使えたのだ。
店頭の売場づくりは商品ページづくりになった。
接客は商品説明やコピーライティングになった。
お客様との会話はアクセス解析やレビュー分析になった。

そして何より、
「お客様はなぜ買うのか?」
を考える視点はまったく同じだった。
結局、リアルもECも本質は変わらない。
販売員時代に学んでいたのは接客ではなかった。
マーケティングだったのだ。
だから今でも思う。
販売員という仕事は、服を売る仕事ではない。
人の気持ちを理解し、価値を伝える力を磨く仕事だ。
そしてその力は、
店頭でも、
ECでも、
マーケティングでも、
経営でも、
どこへ行っても武器になる。
今の販売員には新しい武器も必要だ
ただ、ひとつ付け加えておきたい。
今の販売員には、私たちの時代にはなかったスキルも求められている。
それがSNS発信力だ。

お客様は来店する前にInstagramやTikTokで販売員を見ている。
どんな人なのか。
どんな提案をしてくれるのか。
どんな価値観を持っているのか。
そんな時代になった。
だから今の販売員は接客だけではない。
発信力。セルフブランディング力。
そんな力まで求められる。
昔より楽になったのではない。
むしろ販売員という仕事は、どんどん高度になっているのだと思う。
一番反応が変わったのは、ロールモデルを見せた瞬間だった
そして授業の最後に見せたのが、実際に販売員からキャリアをスタートさせた人たちの事例だった。
販売員からブランドを立ち上げた人。
販売経験を経て経営者になった人。
世界で活躍している人。
実はファッション業界にはそんな人たちがたくさんいる。
ここまでの90分、かなり熱く話してきた。
でも正直に言うと、一番学生たちの目が輝いたのはこの瞬間だった。
私がどれだけ熱く語るよりも、
実際に結果を出している人たちの存在の方が説得力がある。
当たり前だ。
私は彼らにとって先生ではあっても、目指すべきロールモデルではない。
学生たちが見ているのは、
ブランドを立ち上げた人。
好きなことを仕事にしている人。
業界で成功している人たちだ。
だからこそ、
「この人も販売員から始まったんだ」
という事実は強かった。

私が伝えたかったのは、
販売員になれということではない。
販売員で終われということでもない。
販売員という仕事には、その先につながる可能性があるということだ。
そして実際にその道を歩いてきた人たちがいるということだ。
振り返ると、このパートは第三者からの推薦に近い効果があったのかもしれない。
私が販売員の価値を語るより、
実際に結果を出した人たちのキャリアが、その価値を証明してくれていたのだから。
販売員を否定することは、私の人生を否定することだった
授業の最後に、私はもう一度学生たちに聞いた。
「販売職に興味がある人?」
先週はゼロだった。
でも、この日は違った。
一人。
また一人。
そしてまた一人。
最終的に11人の手が挙がった。(勝ちだ!)
もちろん全員が販売員になるわけではない。
それでいい。
私が変えたかったのは進路ではない。
職業観だ。
仕事を肩書きやイメージだけで判断してほしくなかった。
その仕事を通じて何を学べるのか。
どんな力が身につくのか。
そこに目を向けてほしかった。
私は販売員になれと言いたいわけではない。
デザイナーでもいい。
バイヤーでもいい。
EC担当でもいい。
経営者でもいい。
ただ、どんな道を選ぶとしても、販売員という仕事を軽く見てほしくなかった。
なぜなら、今の私を作っているのは間違いなく販売員時代の経験だからだ。
販売員としてお客様と向き合ったこと。
店長としてチームをまとめたこと。
EC事業で売上と向き合ったこと。
講師として学生たちに伝えていること。
すべての土台は店頭にある。
だから私にとって、
販売員を否定することは、
自分自身の人生を否定することと同じだった。
私は90分熱く語った。
いや、かなり暑苦しかったと思う。明らかに聞いていない子もいた。
全員に伝わるなんておこがましい。
でも後悔はしていない。
販売という仕事には、それだけ語る価値があると思っているからだ。
そしていつか学生たちが社会に出た時、何人かが
「あの時の話、少し分かったかもしれない」
そう思ってくれたら嬉しい。
職業に貴賤はない。
あるのは、その仕事から何を学び取るかだ。
私はこれからも、そのことだけは伝え続けていきたいと思う。


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