6月は、一か月を通してVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の授業を行いました。
学生たちには、売場づくりを通して「商品をどう見せるか」だけでなく、「なぜその売場にするのか」を考えてもらうことを目的に取り組んでもらいました。
授業が始まった頃、学生たちが最初に意識していたのは、やはり「見た目」でした。
「もっときれいに並べよう。」
「高さを変えたらバランスがいいかな。」
「この色の組み合わせの方がおしゃれに見える。」
グループで話し合いながら、一生懸命売場を作っていました。
その姿勢はとても大切です。
ただ、その様子を見ていて感じたのは、多くの学生の意識が「見せ方のテクニック」に向いているということでした。
そんな中で、一人の学生がこんなことを話してくれました。
「私はセンスがないので、こういうのは苦手です。」
その言葉を聞いたとき、「この授業で一番伝えなければいけないことはここだ」と感じました。
VMDはセンスを競うものではない
VMDという言葉から、多くの人は華やかなディスプレイや、おしゃれな売場をイメージします。
SNSや雑誌で紹介される店舗も、美しく整えられた売場ばかりです。
だから、「センスがある人が作るもの」と思ってしまうのも無理はありません。
しかし、本来のVMDはそこが目的ではありません。
VMDとは、MD(マーチャンダイジング)をビジュアル化することです。
会社が今、何を売りたいのか。
どんなお客様に、どんな価値を届けたいのか。
その販売戦略を、お客様が自然と理解できる売場へ落とし込むことがVMDです。
つまり、VMDとは「きれいに見せる技術」ではなく、売場で販売戦略を伝える仕事なのです。
売場には必ず「意図」がある
例えば、「今週はリネンシャツを強化したい」という販売計画があるとします。
その商品を入口に置くのか。
マネキンに着せるのか。
バッグや帽子と一緒に提案するのか。
それとも旅行コーナーで展開するのか。
そこには必ず理由があります。
売場は、思いつきや感覚で作るものではありません。
「この商品を、こんなお客様に届けたい。」
「この組み合わせなら、生活シーンをイメージしていただける。」
そんな意思と意図を形にしたものがVMDです。
だから必要なのはセンスではなく、「なぜそうするのか」を考える力なのです。
お客様を一番知っているのは現場のスタッフ
現在、多くのチェーンストアでは、本部がVMDを企画し、店舗はその指示に沿って売場を再現します。
ブランドイメージを統一し、どの店舗でも一定の品質を維持するためには、とても合理的な仕組みです。
私自身、その仕組みを否定するつもりはありません。
しかし、一つ気になることがあります。
それは、売場づくりが「考える仕事」から「再現する仕事」になってしまうことです。
本部から届いた指示書どおりに商品を並べる。
マネキンを着せ替える。
POPを設置する。
それだけでは、売場に込められた意図を理解しているとは言えません。
毎日お客様と接しているのは、本部ではなく、現場の販売スタッフです。
「最近、この色を探している方が増えた。」
「旅行用のバッグを探す方が多い。」
「プレゼント需要が高まっている。」
そんな変化を最初に感じるのは現場です。
だから本来、VMDは現場から生まれるべきものでもあると思っています。
売場を作らなくても、VMDを学ぶ意味がある
学生の多くは、卒業後にチェーンストアへ就職するでしょう。
その場合、自分で自由にVMDを考える機会は少ないかもしれません。
それでも、私はVMDを学ぶ意味があると考えています。
なぜなら、売場の意図を理解している販売員は、お客様への提案が変わるからです。
「おすすめの商品です。」
という説明だけではなく、
「今シーズン、この商品を入口で展開しているのは、今年のテーマを象徴するアイテムだからです。」
そんな背景まで伝えられる販売員になれます。
売場を理解することは、商品を理解すること。
そして、お客様へ価値を伝える力を身につけることでもあります。
6月の授業で一番伝えたかったこと
授業の最後に、学生たちへこんな話をしました。
「VMDは、センスがある人だけの仕事ではありません。」
「売場にある一つひとつの理由を考えられる人が、VMDができる人です。」
売場は、ただ商品を並べる場所ではありません。
会社の販売戦略を、お客様へ伝える場所です。
そして、その売場に立つ販売員が意図を理解しているからこそ、お客様との会話に説得力が生まれます。
私は学生たちに、おしゃれな売場を作れる人になってほしいのではありません。
「なぜ、この商品をここで提案するのか。」
その理由を自分の言葉で説明できる販売員になってほしいと思っています。
それこそが、VMDの本質であり、販売という仕事の面白さであり、AIやマニュアルだけでは代替できない「現場の価値」なのではないでしょうか。
筆者プロフィール
高渕 修|株式会社SUNNYDAYWORK 代表
WEBマーケター・服飾専門学校講師。
アパレル販売歴25年、店舗運営20年、EC運営10年。
ショップスタッフから店長、店舗運営、オンライン事業部長を経て独立。現在はEC事業者の運営支援・WEBマーケティング・ECコンサルティングを行うほか、服飾専門学校で店舗運営やEC、マーケティングを指導し、現場で活躍できる人材育成に取り組んでいます。
「現場で本当に役立つ知識を、わかりやすく伝える」をテーマに、店舗・EC・人材育成について発信しています。
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私は服飾専門学校で、店舗運営・EC・Webマーケティングを中心に授業を担当しています。
現場で培った経験をもとに、「現場で本当に役立つ考え方」を学生や企業の皆さまへお伝えしています。専門学校・大学での特別講義
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